ゴムの木の樹皮につけられた切り口からにじみ出てくる樹液をカップに集めたものが「ラテックス=天然ゴム」です。
ゴム風船の原料であるラテックスは樹皮から直接採取するため、ゴムの木を伐採することはありません。つまり、ゴム風船や手術用手袋などの製品がより多く使われれば、それだけゴムの木の経済的価値が上がって、むやみに伐採されることも少なくなるのです。ブラジルの人類学者メアリ・エレナ・アレグレゥティ博士は、ブラジル北部で伐採され、無視され、忘れ去られようとしてきたゴムの木の有効性を人々に理解させ、「自然の持続可能な利用」を産業として確立させた功績により、1992年のWWF(世界自然保護基金)ゴールドメダルを獲得しています。
ゴムの木は現代人と大自然とがうまく共存できることを示す好例。
あなたがゴム風船を手にした時、そのもととなるゴムの木々が、自然の生態によって地球の大気を維持し、生態系を保護していること、そして産業として第三世界の人々の生活を支えていることを思い出してください。
研究によれば、こうしたゴム風船のほとんどは上空約8キロまで上昇していきます。風船はそうした高空で7.3倍にまで膨張し、またその高空の気温はマイナス40度まで低下するため凍結し、スパゲッティ状に粉々に分裂して、拡散しながら地上に落ちてくるということがわかっています。私たちが滅多にゴム風船が落ちているところを見たことがない訳も、これでわかりますね。
実際、世界各国で行われているビーチクリーンナップ運動(海辺での清掃活動)の報告でも、回収されるゴミのワーストグループに、ゴム風船の名が挙がったといういう例はありません。時には野生動物がゴム風船の柔らかい断片を食べてしまうこともありますが、実証研究の結果では、飲み込まれた破片は動物自身には何ら害をおよぼさず、最終的に消化器系を通って排出されるということが知られています。
バルーン業界関係者と報告者による広範な調査の結果、こうした事例が事実として確認されたことはこれまでに1件もありません。米国魚類・野生動物機関のキャッシー・ベックさんが、8年の間に死んだ439頭のセイウチの調査を行った結果わかったことは、死亡したセイウチの体内からもゴム風船は1個も見つからなかったという事実です。
最も多くとりあげられている報告は、米国・ニュージャージー州の海生哺乳動物保護センターで、死亡した海亀の腸の中からゴム風船1個を発見したというもの。これも、同センターの責任者のボブ・シュールコフさんは「海亀の死亡原因がゴム風船にあるとは断定出来きない」と語っています。学術的根拠をもたない報告がマスコミに流れたために、多くの人がゴム風船を誤解することになったのはとても残念。私たちは一日でも早くこの誤解をとかなければとおもっています。
このお話はJAPAN BALLOON FUN CLUB編集・発行のパンフレット「BALLOON STORY」から引用しています。